Kawamoto Y, Morinaga Y, et al. TNF-α inhibits the growth of Legionella pneumophila in airway epithelial cells by inducing apoptosis. J Infect Chemother. 23: 51-55, 2017(リンク)
微生物検査室の臨床検査技師で、当教室の大学院生でもある川元 康嗣 技師のTNF-αによる気道上皮細胞内でのLegionella pneumophilaの増殖阻害についての論文が、日本感染症学会・日本化学療法学会の英文誌であるJournal of Infection and Chemotherapy誌に掲載されます(2017年1月付)。
関節リウマチを中心に生物学的製剤であるTNF-α阻害剤が多く使用され、臨床症状改善・関節破壊進行抑制・身体機能の改善などで多くの効果を認めています。一方で、アメリカのFDAなどがTNF阻害剤の副作用として、感染症のリスクが増すことを警告しており、当教室の賀来敬仁助教も重症レジオネラ感染症の一例を報告しています。
本研究では、TNF-αがL. pneumophila感染に与える影響をヒト気道上皮細胞であるH-292細胞を用いて検討しました。気道上皮細胞にTNF-αを投与すると、L. pneumophilaの増殖が阻害され、TNF-α阻害薬の投与によって、その作用が減弱しました。詳しく検討するとTNF-αを投与したL. pneumophilaが感染した気道上皮細胞では、caspase-3/7の活性化が起こっており、アポトーシスが起こっていることが示唆されました。本研究の結果から、L. pneumophilaが感染すると、TNF-αによって気道上皮細胞のアポトーシスが起こり、そのことによってL. pneumophilaの増殖が抑えられている可能性が示されました。
当教室には、医師および臨床検査技師の大学院生が、栁原教授、小佐井助教、賀来助教などの指導の下、気道上皮細胞を用いた感染症の病態解明や抗菌薬の効果について研究しています。研究に興味のある方は、いつでもお問い合わせください。
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