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2018年8月13日月曜日

ESBL産生肺炎桿菌におけるキノロン耐性・J Med Microbiol

Higashino M, Murata M, et al. Fluoroquinolone resistance in extended-spectrum β-lactamase-producing Klebsiella pneumoniae in a Japanese tertiary hospital: silent shifting to CTX-M-15-producing K. pneumoniae. J Med Mirobiol. 66: 1476-82, 2017.


医学部生の時に当教室で研究をしていた東野 真志 先生と大学院生の村田 美香 技師のESBL産生肺炎桿菌のキノロン耐性についての論文がMicrobiology Societyが発行するJournal of Medical Microbiology誌に掲載されました(2017年10月付)。

 大腸菌や肺炎桿菌におけるESBL産生菌の割合は世界的に増加しています。MRSAや多剤耐性緑膿菌(MDRP)などの従来の薬剤耐性菌は院内で拡散することが多かったですが、ESBL産生菌は入院歴がない患者さんから検出されることもあり、市中で拡散している可能性が指摘されています。ESBL産生菌に有効なβラクタム系抗菌薬はカルバペネム系抗菌薬ぐらいしかありません。タゾバクタム・ピペラシリンも感性であることもありますが、高菌量では有効でないことが報告されています(当教室の論文を参照)。更に、ESBL産生菌ではキノロン耐性菌が多いことも報告されています。

 本研究では、2011年から2013年に長崎大学病院で検出されたESBL産生肺炎桿菌のキノロン耐性について調査しました。調査期間にCTX-M-15型のESBL産生肺炎桿菌が増加していました。レボフロキサシン耐性については、CTX-M-15型が62.5%であったのに対してそれ以外の型では9.1%とCTX-M-15型ではキノロン耐性の割合が有意に高いことが明らかになりました。また、CTX-M-15型とそれ以外の型ではキノロン耐性の保有率に有意な差がありました。本研究から、日本でキノロン耐性を持っていることが多いCTX-M-15型のESBL産生肺炎桿菌が増加していることが明らかとなりました。このような薬剤耐性菌が増加すると抗菌薬の選択肢が少なくなるため、この傾向が持続するのか注意する必要があります。

 当教室では栁原 教授森永 講師賀来 助教の指導のもと、医学部の学生が薬剤耐性菌の基礎検討および臨床研究を行っています。東野先生はこの研究内容について国際学会でも発表を行いました(リンク)。
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