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2018年8月30日木曜日

高感度インフルエンザ抗原迅速検査システムの有用性・感染症学雑誌


岩永 祐季、小佐井 康介, et al. 高感度インフルエンザ抗原迅速検査システムの有用性. 感染症学雑誌. 91 (5): 747-51, 2017.


 昨年になりますが、当時微生物検査室所属(現在は生化学検査室)の岩永 祐季 技師の高感度インフルエンザ抗原迅速検査システムについての検討が一般社団法人日本感染症学会の機関紙である感染症学雑誌に原著論文として掲載されました(2017年9月付)。

本検討では銀増幅によりインフルエンザウイルス検出感度を高めたイムノクロマト法(銀増幅IC法)の有用性を検討しました。イムノクロマト法を原理とする従来法と比較したところ、両検査法の一致率は94.1%でした。インフルエンザウイルス陽性率は銀増幅IC15.8%、従来法10.8%でした。本検討では従来法の結果のみを臨床に返送しましたが、銀増幅IC法が陽性の症例のうち、ノイラミニダーゼ阻害薬が投与されたのは従来法が陰性の場合には9.1%、陽性の場合には90.5%と後者で有意に高い結果でした。また、抗菌薬が投与された割合は、従来法が陰性の場合45.5%、陽性の場合には19.0%と後者で低い傾向でした。院内感染対策では銀増幅IC法が陽性であったにもかかわらず、従来法が陰性であったためにノイラミニダーゼ阻害薬が投与されないまま入院もしくは入院継続となった症例がありました。
 本検討では、銀増幅IC法により高感度にインフルエンザウイルスを検出することは、適切なノイラミニダーゼ阻害薬の投与や不要な抗菌薬投与の抑制、および適切な感染制御の実施に貢献できる可能性が示唆されました。

 当教室では、栁原 教授森永 講師賀来 助教の指導のもと、微生物検査についての基礎検討および臨床研究を行っています。研究に興味のある方は、いつでもお問い合わせください

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